この秋から日本フィルハーモニー交響楽団の首席客演指揮者に就任した、シンガポール出身のカーチュン・ウォンさんのお披露目演奏会が10日と11日にサントリーホールで開催され、そのうちの11日公演を拝聴いたしました。

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 ウォンさんは今年日本で、もっとも高くその星を登らせたマエストロといってよいかも知れません。春から、東京交響楽団、読売日本交響楽団との共演を重ねてそのたびにフレキシブルな演奏を聴かせてこられました。

 数年前、この方も今をときめく、川瀬賢太郎マエストロにインタビューさせていただいたとき、コンクール・チャレンジ時代にあちこちでこのウォンさんと出会い、そのとてつもない才能に圧倒されたと話しておられましたが、今年たて続けにウォンさんを聴いて、川瀬マエストロの言葉がよく理解できました。日フィルによきポストを得られて、ご本人のためにも、ファンのためにも喜ばしいことと思っております。

 さて本日は、日フィルのトランペット首席、クリストフォーリさんのソロによる、アルメニアの作曲家アレクサンドル・アルチュニアン(19202012)のトランペット協奏曲と、グスタフ・マーラー(18601911)の5番というプログラムでした。

 クリストフォーリさんはお名前から察しがつくようにイタリアのお生まれで今年35歳。2009年から日フィルで吹いておられます。歌の国のご出身らしい甘くなめらかなソロを聴かせてくださり、トランペットという楽器がこれほど歌う楽器であったのかと、認識を新たにさせていただきました。

 マーラーの5番は堂々の16型で、木野雅之さんと田野倉雅秋さんのダブル・コンマス体制。ウォン・マエストロのお披露目を盛り立てようとする日フィルの気合が伝わってきます。

 冒頭のトランペット・ソロは、つい先刻の前半プログラムで協奏曲ソリストを務めたばかりのクリストフォーリさん。2日間の連続公演の2日目ですから、かなりエネルギーを消耗されていたと思うのに、一点の曇りもなく、曲の顔のような主題を晴れやかに吹奏なさいました。

 全体に遅めのテンポの中にさらに細かくテンポの操作された葬送行進曲、嵐の如く、しかしどこか冷静に開始された第2楽章、ホルン首席の信末碩才さんの技量が冴えた第3楽章、耽美の極みの中に理性の覚醒も感じられたアダージェット、輝かしい終末へとすべてを止揚していったフィナーレ、ウォンさんの自信に満ちた暗譜指揮はあざやかそのもの。
 演奏が終わると、ホルンの信末さんを真っ先に立たせ、次いで、クリストフォーリさんはじめ、各トップをねぎらわれ、カーテンコールではこのご両人を伴われてご挨拶。客席の多くが立って、お三方に熱い拍手を贈られていました。
 ウォン・マエストロ、今後はさらに、作曲家の内面により深く踏み込んでいっていただければ最高かと存じます。

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