今朝、「ニュースでも」と思いNHKラジオをつけますと、めずらしく落語が流れてまいりました。落語に明るくないわたくしの耳にも、名人のお噺であることがすぐわかりましたので、続けて聴かせていただくことにいたしました。長屋の人情噺らしく、おつむのめぐりはよくないけれども、たいそう親孝行な青年を町内の皆が支援して、飴売りを開業させ、その飴の名を「孝行糖」とつけ、愉快な宣伝文句を覚えさせて、なんとか独立させるお噺でした。幸い、その宣伝文句が面白く、この飴を買って子どもに舐めさせれば孝行な子になるのではないかと、街の人たちがこぞって買ってくださいましたので大盛業。
ところが、ある日、厳格なことで知られる水戸様のお屋敷前で大声を張り上げてとがめられ、六尺棒でしたたかに打ち据えられてしまいます。通りかかった近所の人が、これこれこういうわけで、と事情を説明し、ようやく無罪放免となりますが、「痛い、痛い」と泣くので、「どれ、どこが痛い?」と聞きますと「こことー、こことー」というのがオチ。
もう一話は『一目上がり』というお噺。
御隠居さんから雪折れ笹の描かれた掛け軸をみせてもらい、人間も辛抱が肝心という意味だよと教えられた八つぁんはいたく感動し、褒めたつもりで、思わず「音羽屋‼」と口走ります。すると、ご隠居、「こういうときは、結構な賛ですなあ と、いうもんだ」。そこで八つぁんは、次の訪問先でその通りに言おうと掛け軸を見せてもらうと、なんと、絵ではなく、難しい文字が書かれています。弱りましたが、ともかくも相手に読んでもらうと、「近江(きんこう)の鷺は見がたく、遠樹(えんじゅ)の烏見易し」と書かれているそうです。


この言葉は、おぼろげに知っていたような気もいたしましたが、初めてはっきり字句と意味がわかり、雷に打たれたような衝撃を覚えました。こんなに一生懸命やっているのに、ちっとも成果があがらない、どなたさまも気づいてくださらない……。ともすれば、そんな不平不満を覚えてしまうこともある自分、急いでいると、よくないことと承知で赤字号でも道を渡る自分、コンサート終了時「分散退場をお願いします」と言われているのに、知らん顔してさっさと帰ってしまう自分が、とてもはずかしく思えたのです。
ふと聴き始めた落語から、思いがけなく、耳の痛い格言を知り、肝に銘じておこうと思いました。
ところで、続きですが、八つぁんが得意げに「よき賛(三)ですな」というと、「いいや、これは根岸の亀田鵬斎先生の詩(四)だよ」といわれてしまいます。さらに次の訪問先でも何やら字句の書かれた掛け軸を見せてもらったので、今度こそはと「よき詩ですな」と褒めると、「いや、詩ではない、これは一休禅師の悟(五)だ」。
さすがの八つぁんも、一つ一つ、数が増えているのに気づきます。
そうか、今度は「結構な六ですな」といえばよいのだ。
閃いた彼は、その次の訪問先では、六人の男の人と一人の女性を賑やかに描いた掛け軸をみて、「結構な六ですな」
「いや、これは七福神だ」
たくさんたくさん、笑わせてくださり、一生の宝となる格言まで教えてくださったお方のお名前は「三遊亭金馬」師匠。
番組を構成なさり、金馬師匠の人となりをご紹介くださったのは、偶然にも、親しくさせていただいている、遠藤ふき子アナウンサーでした。金馬師匠、遠藤さん、ありがとうございました!!
2021年7月22日記
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