昨日予告させていただきましたように、本日は中央区民カレッジの講座にわが国が誇る名ヴァイオリニスト、瀬﨑明日香さんをお迎えいたしました。テーマは、バッハとイザイの無伴奏ヴァイオリン楽曲です。そもそも、無伴奏ヴァイオリンのための楽曲とはどういうジャンルなのか、その旧約聖書たるバッハの6曲はどのような背景のもとに書かれたのか、いかなる性格を持っているのか、ソナタとパルティータからなるけれども、ソナタとパルティータとどこがどう違うのか、それぞれの特性は何か、ことに重要な楽曲『パルティータ第2番』の構成と終曲の『シャンヌ』の意義とは?といったお話を、瀬﨑さんとともに語らせていただいたのち、まず『パルティータ第2番』を演奏していただきました。
いつもながら、強い集中力のもと、キャリアに裏打ちされた深くて幅の広い音楽性と、たゆまざる研鑽の賜物である最高のテクニックをもって奏された、瀬﨑さんの『パルティータ第2番』はいずれの楽章も、思わず居住まいを正される名演で、とりわけ、『シャコンヌ』の序破急の展開、クライマックスの盛り上がりぶり、対位法のあざやかな読み解きと開示は、息を飲むほど感動的で、思わず目頭が熱くなりました。
休憩を挟んで、今度は一転して明るく愉悦感に満ちた『パルティータ第3番』を弾いていただいた後、バッハ以後の無伴奏作品の最高峰、イザイの6曲のうちから、第3番『バラード』をお願いいたしました。神秘的な全音音階の開始部は、まさに物語の始まりを思わせます。そしてクライマックスの執拗な慨嘆、こちらも、とてつもない名演でした。
なにしろ、瀬崎さんが2006年に録音されたイザイの全6曲のCDは、『レコード芸術』特選盤に推された名盤です。それを生で、すぐ目の前で聴かせていただけたのがいかに幸せなことであるかはもちろんですが、イザイをなぜ録音なさったのか、そのお話をうかがえたことも大きな収穫でした。
当時、瀬﨑さんはフォーバルスカラシップ・ストラディヴァリウスコンクールに優勝されて、そのご褒美として、1697年生まれのストラディヴァリウス『レインウィル』を2年間貸与されたのですが、向き合うことになったお相手は、17世紀生まれの頑固でデリケートな、超シニアさま。
この方と対峙なさるのに、まことに苦労されたそうです。そこで、一対一で真摯に向き合えるのは、他の何物も介在しないヴァイオリンのソロ作品しかないと覚悟を決め、イザイの6曲にとりくむことで、気難しいご老人『レインヴィル』さまと次第に仲良くなっていかれたとか。「ストラディヴァリウス貸与」というと何という栄誉なこと、それほどの名器を貸与されたヴァイオリニストはさぞお幸せなこと、と思いがちですが、そんななまやさしいお話ではなく、全力で楽器と格闘しなければならないという運命が待ち受けていたのです。瀬﨑さんは、何の助けも借りないソロ楽曲を手立てとして相手と歩み寄る、という捨て身の選択をなさいました。その成果が、高い評価を得たイザイの6曲のCDだったのです。
ところで、本日は中央区主催講座でしたので区民の方のみのご参加でしたが、瀬﨑さんの名演を広く皆々様に聴いていただかないことにはあまりにももったいないので、来たる11月10日、14:00~16:00、西武新宿線小平駅前の「ルネ小平」レセプションホールにおきまして、小平楽友サークル主催『瀬﨑明日香ヴァイオリン・リサイタル~萩谷由喜子のレクチャーつき』を開催する運びとなりました。楽友サークル・メンバーでない一般愛好家の方々のご参加を喜んでお待ちしております。詳細が決まりましたら、またこのブログで報じさせていただきます。
今から、その日をご予定しておいていただかれましたら、たいへん嬉しく存じます。
2021年7月14日記
いつもながら、強い集中力のもと、キャリアに裏打ちされた深くて幅の広い音楽性と、たゆまざる研鑽の賜物である最高のテクニックをもって奏された、瀬﨑さんの『パルティータ第2番』はいずれの楽章も、思わず居住まいを正される名演で、とりわけ、『シャコンヌ』の序破急の展開、クライマックスの盛り上がりぶり、対位法のあざやかな読み解きと開示は、息を飲むほど感動的で、思わず目頭が熱くなりました。
休憩を挟んで、今度は一転して明るく愉悦感に満ちた『パルティータ第3番』を弾いていただいた後、バッハ以後の無伴奏作品の最高峰、イザイの6曲のうちから、第3番『バラード』をお願いいたしました。神秘的な全音音階の開始部は、まさに物語の始まりを思わせます。そしてクライマックスの執拗な慨嘆、こちらも、とてつもない名演でした。
なにしろ、瀬崎さんが2006年に録音されたイザイの全6曲のCDは、『レコード芸術』特選盤に推された名盤です。それを生で、すぐ目の前で聴かせていただけたのがいかに幸せなことであるかはもちろんですが、イザイをなぜ録音なさったのか、そのお話をうかがえたことも大きな収穫でした。
当時、瀬﨑さんはフォーバルスカラシップ・ストラディヴァリウスコンクールに優勝されて、そのご褒美として、1697年生まれのストラディヴァリウス『レインウィル』を2年間貸与されたのですが、向き合うことになったお相手は、17世紀生まれの頑固でデリケートな、超シニアさま。
この方と対峙なさるのに、まことに苦労されたそうです。そこで、一対一で真摯に向き合えるのは、他の何物も介在しないヴァイオリンのソロ作品しかないと覚悟を決め、イザイの6曲にとりくむことで、気難しいご老人『レインヴィル』さまと次第に仲良くなっていかれたとか。「ストラディヴァリウス貸与」というと何という栄誉なこと、それほどの名器を貸与されたヴァイオリニストはさぞお幸せなこと、と思いがちですが、そんななまやさしいお話ではなく、全力で楽器と格闘しなければならないという運命が待ち受けていたのです。瀬﨑さんは、何の助けも借りないソロ楽曲を手立てとして相手と歩み寄る、という捨て身の選択をなさいました。その成果が、高い評価を得たイザイの6曲のCDだったのです。
ところで、本日は中央区主催講座でしたので区民の方のみのご参加でしたが、瀬﨑さんの名演を広く皆々様に聴いていただかないことにはあまりにももったいないので、来たる11月10日、14:00~16:00、西武新宿線小平駅前の「ルネ小平」レセプションホールにおきまして、小平楽友サークル主催『瀬﨑明日香ヴァイオリン・リサイタル~萩谷由喜子のレクチャーつき』を開催する運びとなりました。楽友サークル・メンバーでない一般愛好家の方々のご参加を喜んでお待ちしております。詳細が決まりましたら、またこのブログで報じさせていただきます。
今から、その日をご予定しておいていただかれましたら、たいへん嬉しく存じます。
2021年7月14日記


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