久々に秋らしい日差しに恵まれた日曜日の昼下がり、サントリーホールで開催された日本フィルの名曲コンサートに出掛けました。指揮者は、今、上昇機運に乗りにのった角田鋼亮マエストロ。ソリストは、昨年バッハの無伴奏ソナタ&パルティータの全曲演奏を達成した、辻彩奈さん。「二人のアーティストが導く、祈りのバッハ&ブラームス」と題されているように、前半は辻さんが、ニ短調パルティータから終曲『シャコンヌ』を独奏して幕を開け、そのあと、バッハの2曲のオリジナル協奏曲、第1番イ短調と、第2番ホ長調を、角田マエストロの指揮で6,6,4,3,2、チェンバロの日本フィルと協演。後半は12型の日本フィルと角田マエストロとの協演で、ブラームスの交響曲第4番が演奏されました。
 辻さんは1997年岐阜県生まれの23歳。昨年、諏訪内晶子さんにインタビューさせていただいたときに、諏訪内さんが音楽監督を務める国際音楽祭NIPPONのマスタークラスからは、早くも優秀な若手が育っているというお話をなさり、「例えば?」とおききすると、間髪を入れずにあげられたお名前が、辻彩奈さんでした。これまでに、協奏曲もリサイタルも何回も拝聴して、辻さんの桁外れの力量に感銘を受けてきました。今年は、コロナ禍の始まる直前の2月にフランスのナントの「ラ・フォル・ジュルネ」でお会いして、8月18日にリサイタルも聴かせていただいていました。 
 この日フィルはちょうど2カ月ぶりに聴きましたが、張りのある艶やかな音はさらに磨きがかかり、音楽の前進性はより一層増して、フレッシュでよどみのない、21世紀のバッハが朗々と鳴り渡りました。休憩時間が終わり、席に戻ろうとしましたら、もう平服に着替えられた辻さんが客席で後半のブラームスを聴こうとされているところでしたので、ナント以来の再会を喜び合いました。写真は辻さんの楽屋前でのツーショット。
DSC_3491

 後半のブラームス4番。しなやかで、メリハリのある角田マエストロの棒に圧倒されました。第1楽章の展開部の熱いこと熱いこと。フィナーレ・コーダのアッチェレラントのすさまじいこと。各セクションへの目配りも隙がなく、ツボを押さえて各楽器をよく鳴らすので、たいへん爽快でフレキシブルなブラ4でした。
DSC_3489
写真はステージ袖にひきあげてこられたばかりのお疲れのところですが、とても素敵な笑顔です。きっと、ご自分でも納得のいく、ブラームスでいらしたのでしょう。
                                                                             2020年10月19日記