本夕、浜離宮朝日ホールで、佐藤俊介さん(ヴォイオリン)、鈴木秀美さん(チェロ)、佐藤俊介夫人のスーアン・チャイさん(フォルテピアノ)によるブラームスの室内楽公演を拝聴いたしました。弦楽器のお二人はガット弦を用いておられます。
佐藤俊介さんはモダン・ヴァイオリンとバロック・ヴァイオリンの両ジャンルで活躍される実力派ヴァイオリニスト。指揮者としても進境著しい鈴木秀美さんは、古楽のメッカ、オランダとベルギーで長らく研鑽を積まれた古楽のオーソリティー。そして、スーアン・チャイさんはモダン・ピアノとヒストリカル・ピアノを弾きこなす優れた鍵盤楽器奏者でいらっしゃいます。
今宵は幕開けに、佐藤さんとチャイさんでシューマンの『幻想小曲集』が奏されたあとブラームスに移り、ピアノ三重奏曲第2番、第1番の熱い演奏が繰り広げられました。
弦のお二人は、羊の腸からつくられたガット弦使用。弓圧をかけずに自然な響きが得られますが、奏法はたいへん難しく高度な技術が必要です。佐藤さんも鈴木さんもみごとにその技術を自分のにものしていらっしゃり、力みなく弓を操られて、艶消しの音色で表情豊かなブラームスを紡がれました。はじめのうちはざらりとした音の質感にやや戸惑いましたが、耳が慣れてくるとたくさんの倍音が豊穣に鳴っていることに気づき、ガット弦のいぶし銀の音色の虜になりました。
チャイさんが演奏なさったフォルテピアノは、Johann・Baptist・Streicherのオリジナルでウォルナットの木目調の大型楽器でした。19世紀後半製作と思われ、ブラームスの第1番の改訂稿の初演年(1890年)、第2番の作曲年(1886年)あたりにつくられた楽器のようです。まさに今宵は、ブラームス存命中の音に近い音で彼の傑作を味わえたことになります。これが19世紀の音であったのだと噛みしめつつ、帰路につきました。
アンコールは、第3番の第3楽章でした。
3人の演奏家の方々、主催の浜離宮朝日ホールさま、ありがとうございました。
2022年11月21日記
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