1月24日、本夕は上野の文化会館小ホールで、モルゴーア・クアルテットの第52回演奏会を拝聴いたしてまいりました。モルゴーアの第一ヴァイオリンは荒井英治さん、第二ヴァイオリンは戸澤哲夫さん、チェロは藤森亮一さん、ヴィオラは小野武富士さん、プログラム解説は池辺晋一郎先生です。
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 ショスタコーヴィチの全15曲の演奏をメイン柱とするこのクアルテットは1992年結成。ですので、今年は結成30周年。ただものではない4/名の方々だけあって、いつも刺激的なプログラミングと演奏ですが、今回は、ショスタコーヴィチはおろか、古典派もロマン派もない、現代にほぼ近いおそるべき4作品が採り上げられました。
 そのうち3作品は、現代日本人作曲家によるもので、田中カレン『メタル・ストリング』、狭間美帆『キメラ』,長生淳『レッド・ツェッペリンに導かれて』です。唯一、日本人ではない作曲家の作品としては、昨年物故されたオランダ生まれのルイ・アンドルーセンの「死へ向かって」が演奏されましたけれど、第一ヴァイオリンの荒井さんによると、これは奏者を試すかのような、容赦のない、たいへんドライな難曲とのとでした。しかし、拝聴している身としては、調性を踏まえている点において、意外にも聴きやすい、耳にやさしい音楽でした。
 日本人お三方の作品はどれもそれぞれのベクトルで、優れていると感じました。もはや、今ではこのような、どこのどなたがどこそこでどのような背景のもとに書いたのか、などということが、正面切って問われることなく、聴いて、イマジネーションを掻き立てられ、気持ちが動かされれば、それが銘品なのだということに今更ながら心を動かされました。
                               2022年1月24日記